高橋もなみ(修士課程2年)

佐渡島とその周辺地域における冷温帯植生の比較

 佐渡島の森林は、本州のものと似ているようで似ていない。目立った固有種があるわけではないが、近接する本州新潟県内に分布しないヤマトグサ、オオアカバ ナ、シキミ、ムベなどが佐渡島では見られる。また、ブナが局所的にしか存在せず、島内はミズナラ、コナラ、大佐渡ではスギが優占する。
 本研究は、このような特徴をもつ森林を本州側と比較したときに、どのような違いが見られるかを統計的に示した。調査地は新潟県佐渡島と、本州新潟県内の海岸から山頂まで続く山地の尾根計5ヶ所である。各調査地で標高100m毎に約12プロット(200㎡)設置した。各プロットにおいて、出現した植物の種名および植被率(%)を記録した。また、冬期に各調査地において標高ごとの積雪深(m)を測定し、環境データとして記録した。
 両者の森林を垂直分布で見た結果、本州側は標高が高くなり、ブナが優占するにつれて種数、種多様性が低くなった。その一方、佐渡島はそのような傾向が見 られなかった。また、各プロット間のクラスター分析による分類を行うと、各プロットはブナ優占林タイプである本州高海抜地と、それ以外の2次林タイプであ る佐渡島と本州低海抜地に二分され、佐渡島と本州新潟県内の群集は異なる植物相から構成されていることが分かった。この要因としては、本州の冷涼で多雪な 環境に比べ、佐渡島の温暖で小雪な環境が大きく影響していると考えられる。
 しかしながら、佐渡島全体の植物相を見てみると、本州の低海抜~1500mに多く見られるツツジ、カエデ、カバノキ属など冷温帯性の多くの樹種が抜けている。佐渡島の植物分布の特異性は気候要因だけでなく、他種との種間競争や地史的要因からも考察していく必要がある。

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佐渡島に多く出現するヤマトグサ。本州新潟県内には分布しない。

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上写真は大佐渡演習林で見られるスギ林、下写真は村上市新保岳の同標高域で見られるブナ林。スギ林は亜高木以下の多様性が高いのに対し、ブナ優占林の林冠下はヤマモミジ、エゾユズリハ、ササ類のような低木以下しか出現しない。


長島崇史(修士課程1年)

多雪地の天然スギ林における台風撹乱後の更新およびクローン生長

  一般に、多雪地の天然スギ林の林床には、スギの実生稚樹はほとんど見られないことが知られています。しかし、強度の撹乱を受けた林分では、閉鎖林内とは全く異なる実生の様子を見ることができます。私たちは、強度の台風撹乱を受けた天然スギ林で、スギの実生がどの程度生き残っているのかを調べました。
  調査は、実生の調査、毎木調査、基質面積の調査を行いました。まず、明らかになったのは、強度の台風撹乱を受けた天然スギの林分では、多くの倒木とマウンドが見られたことでした。そして、これらの基質に多くのスギの実生が定着していました。これは、スギ実生の生育に適した基質である倒木やマウンドが増加し たためと考えられます。
 一方で、台風による影響は実生の定着促進だけではありません。台風によって根返りを起こしたスギは、完全 には枯死せず、地中に根系を下ろしたまま生き続けていました。そして、もともと枝だったシュートが、90度倒れたことで、今度は幹として垂直に生長してい ました。調査区内の根返り木の56%が生き残り、 その枝の樹高は平均で約2mに達していました。
 本研究では、台風のような頻度の低い撹乱が、成熟した天然スギ林に対して、大きな影響を与えることを示しました。今後、このような攪乱に対するスギの対応を考慮したうえで、他の成熟林分において初期の成立過程を推定することを考えています。

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