大学の世界展開力強化事業(トルコ)

ご挨拶

新潟大学長 髙橋 姿

新潟大学は、日本における日本海側地域に位置する総合大学として、環東アジア地域を起点に、地域から世界までを見据え、教育と研究及び社会貢献を通じて人類の平和と発展に寄与することを全学の目的にしています。そのために、グローバル化が加速する21世紀の国際社会において、高度で豊かな語学力・コミュニケーション能力と異文化対応力を身につけ、国際社会と地域社会に積極的に関与・貢献できるグローバル人材の養成に向けて努力を続けています。

その様な中にあって、この度、日本学術振興会が募集する「大学の世界展開力強化事業」(トルコ)に農学部、大学院自然科学研究科及び災害・復興科学研究所が共同で申請した「経験・知恵と先端技術の融合による、防災を意識したレジリエントな農学人材養成」が採択されたことは、この上ない喜びです。

本学は福島大学とともにトルコ・アンカラ大学、エーゲ大学及び中東工科大学と農学分野及び災害・復興分野等で教育研究交流を行っています。連携5大学の交流実績を基に、本事業により交流を先導的に実施することで、その成果の全学的普及やより広範囲での交流が発展することを期待しております。

新潟大学農学部長・統括センター運営委員長 末吉 邦

新潟大学では農学部、大学院自然科学研究科および災害・復興科学研究所が中心となり、福島大学との共同で「経験・知恵と先端技術の融合による、防災を意識したレジリエントな農学人材養成」事業を、平成27年度大学教育再生戦略推進費「大学の世界展開力強化事業」(トルコ)に申請し、採択に至りました。

本事業におけるトルコ側の連携大学は、アンカラ大学、エーゲ大学及び中東工科大学の3校です。新潟大学とアンカラ大学の間には、農学分野等における約16年間の研究交流をベースにして平成22年に締結された大学間交流協定があり、活発な学生交流を続けています。エーゲ大学とは平成22年から有機農業分野を中心に、また中東工科大学とは平成19年から災害復興分野で研究交流実績があり、平成27年に両大学と新潟大学の間で大学間交流協定が締結されました。福島大学でも農業及び災害復興分野でアンカラ大学及びエーゲ大学と研究交流の実績があります。

新潟県及び福島県は我が国屈指の農業県で、稲作を中心として野菜、園芸、果樹、畜産など様々な特徴ある農業が展開されています。両県合わせて、太平洋から日本海まで、平野部から沿岸砂丘地、盆地、中山間地、島しょまでを網羅しています。また豊かな農業生産力を背景に、食品産業が集積する地域となっています。しかし、地震や降雨に伴う地すべり、水害、雪害等の自然災害の多発地帯であり、平成23年3月に発生した東日本大震災の被災地でもあります。一方、トルコは農業がGDPの約8%を占める世界有数の農業大国です。近年、過度の集約的農地利用や砂漠化等による土壌劣化が問題となっており、また我が国同様に災害多発国です。

このように、我が国とトルコの農業や食料・食品生産は、共通するリスクに晒されております。本事業は、連携5大学それぞれの強みを結集し、両国の歴史的経験と積み上げてきた知恵に先端技術を融合して、こうしたリスクに柔軟に対応し、さらには経済発展に繋げることのできる「レジリエント」なグローバル人材の育成と、そのための教育フレームワークの構築を目指すものとなっております。

本事業を通して日土交流の一層の活発化を目指すとともに、他学部や他大学への波及を進め、異文化理解能力と多層的視点を涵養する国際教育交流の拠点となるよう、努力を重ねていきたいと考えております。関係の皆様にはますますのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

福島大学経済経営学類長 佐野 孝治

新潟大学を代表とする「経験・知恵と先端技術の融合による、防災を意識したレジリエントな農学人材養成」事業が、文部科学省「大学の世界展開力強化事業」(交流先:トルコ)に採択され、福島大学の主たる実施部局である経済経営学類の長として大変嬉しく思っております。

福島大学は、2004年の法人化以降「グローバルに考え地域とともに歩む」ことを理念の一つに掲げ、国際的視野を深める教育の充実に努めてまいりました。そのさなか、2011年3月発生の東日本大震災により、東北地方そして福島は、地震・津波および原子力発電所事故の大災害に見舞われました。本学は、被災地の地元大学として地域の復興を支援するとともに、将来に亘って復興を担う人材の育成に力を注いでいます。また、国外を含め多くの大学や諸機関との間で復興に向けての連携を進め、国際交流においても、被災地福島の現状や課題の理解に向けた外国人学生向けプログラムを発展させてきました。

大学院経済学研究科としては、文部科学省支援の「ふくしま未来食・農教育プログラム」(2013~2017年度)の教育組織として「地域産業復興プログラム」を開設し、原子力災害に立ち向かう「食」と「農」の担い手育成に取り組んでいます。さらに、経済経営学類では、従来からの「英語副専攻」を発展させて「福島の復興を担うグローバル人材育成」のプロジェクトを開始し、被災地福島と世界が直面する課題について英語で学ぶワークショップを実施しています。

以上のような東日本大震災への取組の経験をもとにして、防災や災害復興に関わるレジリエントな農学人材養成という本事業の遂行に貢献し、本学のグローバル人材育成力、グローバル展開力をより一段と高めていきたいと思っています。そして、トルコの3大学および新潟大学との連携によるこの事業の人材養成モデルが、5大学および世界の共通資産となることを期待しています。