(農業情報研究,15巻4号,395-404頁,2006)

環境保全型営農意思決定支援システムの開発研究

-水稲・ハウス栽培体系における温室効果ガス排出量と農業粗所得の関係-

齋藤貞文・中野和弘・大橋慎太郎


要 旨

本稿では,農業粗所得を高く維持するための栽培体系,作付け面積,および圃場内での温室効果ガス算定排出量について検討できる環境保全型営農意思決定支援システムの開発を目的とした.

 これまでに筆者らが開発した環境保全型営農意思決定支援システムに対し,「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案ver1.6)」に準拠した温室効果ガス排出量の算出機能と,ハウス栽培計画と暖房費の算出機能を追加した. このシステムを用いて新潟県における水田作・ハウス栽培の複合経営農家モデルを作成し,営農計画と温室効果ガス算定排出量の評価を行った.さらに,このモデル計画時の暖房費の算出を予測した.旬移動計画を用いることで,農家の可能労働時間を有効に利用することができ,標準作付け計画より178万円(10%)の農業粗所得の増収が見込まれた.温室効果ガス算定排出量制約計画を用いることで,温室効果ガス算定排出量を標準計画より90%,80%に抑制しながら,農業粗所得は標準作付け計画よりそれぞれ0.1%減(12.8万円減),0.5%減(78.1万円減)と高く維持する計画立案を行った.温室効果ガス収益率で比較することで,このモデルでは,しゅんぎく(ハウス冬どり)が環境への負荷が少なく,しかも収益率が最も高い栽培作物であることが示された.



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