(農業情報研究,19巻2号,16-22頁,2010)

感水紙の薬液付着液斑被覆面積率を簡易かつ高精度に測定する画像処理ソフトウェアの開発

窪田陽介・臼井善彦・林和信・水上智道・宮原佳彦・大里大・中野和弘


要 旨

 現在,農薬の漂流飛散(以下、ドリフト)の評価法としては,感水紙を用いて薬液付着液斑の被覆面積率を算出する方法が用いられている.しかし,この方法は,目視測定となるため精度に客観性が無く,作業者に大きな負担が強いられる.そこで本研究では,ドリフトの客観的評価が可能な画像処理ソフトウェアの開発を目的とした.本研究では,農薬散布試験から回収された感水紙を供試材料として,イメージスキャナを用いてカラー画像を取得した.得られた画像データについて,カラー画像の色成分分離,測定対象領域決定,2値化処理,ラベリング処理により,感水紙における薬液付着液斑の被覆面積率を算出する画像処理アルゴリズムを開発し,Visual C#によりソフトウェアの開発を行った.本研究で開発したソフトウェアにより測定した感水紙の被覆面積率は,市販の画像処理ソフトウェアによる手動測定結果と高い相関関係(R2=0.9923)が認められた.また,1画像(感水紙8枚分)あたりの平均測定所要時間についても1/4以下となり,大幅な高速化を実現した.従って,本研究で開発したソフトウェアを使用することで,全国の試験場等におけるドリフト評価の作業負担が大幅に軽減されることが期待される.



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