研 究 紹 介


 
NKKでは,花き園芸植物(草花類)を材料に用いて,バイオテクノロジーによる増殖および育種を検討しています.ここでは,① 組織培養による優良個体および絶滅危惧植物の増殖・保存,② 胚救出による遠縁種間雑種の作出,および ③ 遺伝子組換えによる花色・花形・草姿の改変,に関する研究例を紹介します.
 なお,関連論文のリストは
研究業績 のページにあります.


組織培養による優良個体および絶滅危惧植物の増殖・保存

 組織培養を行って植物の細胞・組織から完全な植物体を再生させることにより,優良な性質をもった個体を大量に増殖させたり,絶滅に瀕した植物を効率的に増やしたりすることができます.また,細胞融合や遺伝子組換え等のバイオテクノロジーによる育種を行う際にも,対象とする植物において,細胞・組織から完全な植物体を再生させる条件をあらかじめ明らかにしておくことが重要です.
 NKKでは,これまでに,ユリ類,ホトトギス類,アガパンサス,ムスカリ,ミセバヤ類,センノウ類,イワタバコ科植物等において,植物体再生の条件を明らかにしました.

ホトトギスにおけるエンブリオジェニックカルス(EC)からの
不定胚形成および植物体再生

花被から誘導した p1010046 dscf5527 c5cont
 左から,「花被から誘導した EC からの不定胚形成」,「不定胚の発芽」,「植物体再生」,
および「組織培養由来植物体の開花」


絶滅危惧植物ミセバヤおよびエッチュウミセバヤにおける不定芽形成および植物体再生
item6 item5 発根小植物体
 左から,「花蕾基部からの不定芽形成」,「植物体再生」および「組織培養由来の苗」



胚救出による遠縁種間雑種の作出

 交雑は植物育種の主流となる方法です.しかし,両親の縁が遠いと受精が起こっても雑種胚の成長が途中で停止して種子が得られないことがあります.そのような場合に,成長を停止する前の胚を取り出して培養することにより,雑種植物体が得られることがあります.この技術を胚救出といいます.
 NKKでは,胚救出により,コルチカム科における属間雑種,ホトトギス属における種間雑種,センノウ属における種間雑種等の作出を検討しています.

コルチカム科における属間雑種の作出
item7 item8 item10
 左から,「胚珠培養によるラーゾーム様構造物の形成」,「ライゾーム様構造物からの
シュート形成」,および「植物体再生」

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 リットニア(左)とサンダーソニア(右)間の属間雑種(中央)の花

litgsu
 リットニア(左)とグロリオーサ・スペルバ ‘ルテア’(右)間の属間雑種(中央)の花


センノウ属における種間雑種の作出
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 ツクシマツモト(左上)およびエゾセンノウ(左下)間の種間雑種(右3列)の花


ホトトギス属における種間雑種の作出
キバナ×青竜
 キバナノホトトギス(左)およびタイワンホトトギス ‘青竜’(右)間の種間雑種(中)の花

キバナ×江戸の華
 キバナノホトトギス(左)およびタイワンホトトギス ‘江戸の華’(右)間の種間雑種(中)の花



遺伝子組換えによる花色・花形・草姿の改変

 植物細胞に遺伝子を導入してゲノムに組み込み,その遺伝子を発現する植物(遺伝子組換え植物・形質転換体)を作出する技術です.あらゆる生物の遺伝子を利用できるために,これまでは考えられなかった新しい特徴をもつ植物も作出できるようになりました.「青いバラ」もこの技術により作出されました.
 NKKでは,花き園芸植物の花色・花形・草姿に注目し,これらの形質に関する遺伝子の単離・解析を行うとともに,遺伝子組換えにより花色・花形・草姿が改良された植物の作出を検討しています.

フラボノイド生合成経路関連遺伝子を用いた遺伝子組換えによる花色の改変
CHS RNAi 比較
 RNAi 法による CHS 遺伝子の発現抑制により,斑点が消失して純白になったホトトギスの
遺伝子組換え植物(右)およびもともとのホトトギス(左)の花


ABSE モデルに関する MADS-box 遺伝子を用いた遺伝子組換えによる花形の改変
item21
 アガパンサス由来の B クラス MADS-box 遺伝子の導入により花形が変化したレタスの
遺伝子組換え植物(中央・右)およびもともとのレタス(左)の花


ホトトギス・ゾウ
 アガパンサス由来の B クラス MADS-box 遺伝子の導入により花形が変化したホトトギスの
遺伝子組換え植物(右)およびもともとのホトトギス(左)の花


Bクラス CRES-T 1 Bクラス CRES-T 2
 ユリ科などの一部の単子葉植物に特有な同花被花と呼ばれる花に関する形態形成モデル (改変 ABCE モデル) の直接的な証明に
世界で初めて成功しました!

ユリ科ホトトギス属植物をモデルとして用い,遺伝子組換えにより B クラス遺伝子の機能を抑制したところ,
本来ユリ科植物では見られないがく片様器官が形成されました(右)
詳細は,
こちら をご覧ください.


ジベレリン (GA) 生合成・代謝経路関連遺伝子を用いた遺伝子組換えによる草姿の改変
GAホトトギス形質転換体
 トレニア由来の GA 生合成・代謝経路関連遺伝子の導入により草丈が変化したホトトギスの
遺伝子組換え植物(中央・右)およびもともとのホトトギス(左)