<植生について>

佐渡ステーションの森林(演習林)には、以下のような数多くの特徴があります(写真)。

1.主要植生は天然性のスギ林で、特殊な気候のもとでしか成立しない森林である(雲霧帯林)。屋久島・立山など他のスギ天然林に匹敵する大径木が存在する
2.佐渡島において、現在、最も高い自然度を備えた森林生態系であり、約500種の植物と、種数が確定されていない多数の動物・菌類が生息するビトープとして機能している。また、植食性の大型哺乳類が生息していないため、豊かな林床植生が残っている。
3.日本海上の離島における稜線主脈に存在し、冬季の北西季節風の影響を非常に強く受ける(高ストレス立地)
4.演習林の斜面の平均傾斜が25度を超える極めて急峻な立地で斜面崩壊が頻繁に発生する(高撹乱立地)
5.離島の閉鎖生態系の中に存在する森林である

これらの特徴は、他大学の演習林には類例の無いものばかりであり、その意味で小さいながらも非常に個性の強い演習林であると言えます。
 

代表的な森林群集

●スギ天然林(6 9, 11-14, 16林班):
海 からの湿った風が吹き上げることにより、大気中の水分が飽和状態となり霧が頻繁に発生する標高帯(雲霧帯)に形成される日本固有の森林群集です。佐渡ス テーションのスギ林は、総面積・森林の連続性・自然度の高さなどの点から国内有数のもので、特に伏条と呼ばれる無性繁殖により更新した「小杉立」(6林班)の群集と、佐渡最大級(直径約200cm)の大王スギを擁する13林班の群集は共に学術的価値の高い貴重な森です。激しい季節風による傷害のために複雑に屈曲ながらも、500年以上生存してきた個体が多数含まれます。
●ヒバ天然林(21, 22林班):
ヒバ(ヒノキアスナロ)の天然林も、大学演習林としては岩手大演習林のもの以外は類例の無いものです。雪の撹乱が大きく、土壌が崩れやすい湿性の急傾斜地に出現する植物であり、その多くが無性繁殖で更新します。

●落葉広葉樹林・針広混交林(林内随所):
沢筋の地滑り地帯や峠付近で強風が吹き抜ける場所に多く出現する群集です。ミズナラ・トチノキ・サワグルミ・イタヤカエデ・ブナなどの落葉樹に矮性のスギやヒバが混成します。強風が吹く場所や雪が吹きだまる場所では群集全体が矮性化し、大幅に森林の高さが低下します。

<マップ>

<林相図>