モンスーンアジアのデルタ地域は,世界の主要な稲作地域であり,張り巡らされた水路網と多数の水門操作によって用水・排水が管理されている.一方で,その地形的な特徴に加え,水災害リスクの高まりにより,水門操作が一層複雑化しており,従来の経験と判断に基づく水管理のみでは対応が困難になりつつある.本研究では,数時間先の気象予測に基づく順応的な水管理の実現のため,数値シミュレーションと強化学習を統合し,水門管理者の意思決定を支援する水管理プラットフォームを構築することを目的とする.モデルの構築にあたっては,日本国内において伝統的に継承されてきた水管理手法「モタセ」が展開されている矢部川下流域を対象に,プロトタイプの設計と検証を行う.モタセとは,域内に張り巡らされた水路網に多数の水門を設置し,潮位変動を活用しながら,各水門管理者が協調的に水門操作を実施し,水災害の被害を抑制する分散型の水管理形態である.

