配水槽式自然圧パイプラインシステムのハンチング現象防止対策の効果検証

 近年、気候変動に伴う気候の極端現象や自然環境の変化、および兼業農家の増加による用水需要の日変動が顕在化している中、両変化の対応策として「配水槽式自然圧パイプライン(図-1)」が注目されています。本システムはファームポンドと呼ばれる貯水槽を田面標高より1-2m 底上げして設けることで、低平地でのパイプライン送水を可能にします。先行研究により、本システムは用水需要の日変動に柔軟に対応しつつ、建設・維持管理コストの低減や高い節水効果を持つことが示されています。
 一方、「ハンチング」と呼ばれる異常運転が報告されています。ハンチングとはポンプの取水能力と支線用水路からの水供給量がアンバランスになることで、ポンプが起動と停止を短時間に繰り返してしまう現象です。本技術の全国的な普及のために解決策の早急な立案が求められています。現在、対策として貯水槽に調整池(図-2)を併設することが検討されていますが、定量的な評価はいまだに行われていません。本研究では、試験的に調整池が造設された西蒲原打越揚水機場の水理モデルを構築し、数値シミュレーションを行うことで、ハンチング防止対策としての効果を定量的に評価することに加え、調整池の適正容量を検討します。


図1 配水槽式自然圧パイプライン概略図

     図2 試験的に設けた調節池            図3 水位計設置の様子