水田流域におけるネオニコチノイド系殺虫剤の動態予測手法の開発

 ネオニコチノイド系殺虫剤とは、タバコに含まれるニコチンに似た成分をベースとする殺虫剤であり、日本では主に水稲栽培において使用されています。しかし、本殺虫剤の登場と時を同じくしてEU諸国でハチが大量失踪してしまう「蜂郡崩壊症候群(CCD)」が発生しました。ハチは花粉媒介者として重要な役割を果たしており、作物生産にも影響を及ぼします。日本においても同様の現象が報告されているほか、トンボ類、ウナギ、ワカサギの減少や人にも影響を与えると言うことが明らかにされつつあり、その使用が問題視されています。しかし、本殺虫剤の使用とそれらの現象との関係は立証されておらず、科学的な解明が求められています。さらに、水稲栽培において使用されていることから、水を介した拡散が懸念されていますが、水田内や排水路・河川内における本殺虫剤成分の挙動に関する研究は見当たりません。
 そこで本研究は殺虫剤の水田施用から排水路・河川に至るまでの挙動の解明を目的とし、その拡散範囲の特定を目指しています。そのためにコンピューターによる数値シミュレーションで拡散範囲を再現できる動態モデルを開発しようと考えています。2019年度、2020年度は動態モデル開発のために実環境調査や実験を行い、各種パラメーターの把握を行いました。2021年度は動態モデルの開発を目指しています。