グリーティング
私たちが栽培植物の生産量を上げたいと思う場合、大きく2つの方法が考えられます。1つは、栽培法を改良すること、もう1つは、生産量の高い品種を育成することです。言い換えれば、前者は栽培条件という環境をコントロールする事、後者は植物を遺伝的に改良する事を指しており、後者のことを育種と言います。人間は、これまでにじつに多くの栽培植物を育種してきました。
私たちの研究室では、植物の育種に関する基礎的な研究を行っています。
研究分野・テーマ
研究分野は、植物の遺伝育種学です。現在、主にマメ科とイネ科植物を材料として研究を行っています。
1. モデル植物利用による栽培植物育種の迅速化の研究
育種には時間がかかります。その迅速化の方法の1つとして、モデル植物を利用する事が有用なのではと考えています。モデル植物とは、1世代が短く、植物が小型で栽培が容易である等の理由から、遺伝学的研究を加速するために利用される植物を指します。モデル植物自体は栽培植物ではない場合が多いですが、モデル植物から見出された遺伝子の機能に関する情報は、栽培植物の育種に応用できるのではと考えています。私たちは、マメ科のモデル植物であるミヤコグサの研究から得た遺伝子機能に関する知見を、新潟県でも多く栽培されているダイズなど、マメ科栽培植物に応用する試みを行っています(図)。
図、モデル植物(左:ミヤコグサ)で得た遺伝子機能の知見を栽培植物(右:ダイズ)育種に応用する。
2. 植物の生殖機構の研究
栽培植物にとって生殖は2つの意味で大切です。1つは、子実を利用する栽培植物において、生殖が正常に行われる事は生産性の維持にとって重要です。2つめに、育種では利用したい遺伝的変異を交配によって導入するので、生殖を人為的にコントロールする事が求められます。現在私たちは、植物の生殖にとって重要と考えられる遺伝子の機能について、複数の植物種で比較研究を行っています。
3. トランスポゾンの研究
トランスポゾンとは、「動く」DNA配列です。 動く事によって、トランスポゾンは自分の分身を増やすので、植物のゲノムの中にはトランスポゾンがたくさん含まれています。通常トランスポゾンは、動きすぎないよう活性が低く抑えられていますが、栽培植物においてトランスポゾンを活性化させる事により、農業上有用な変異が得られるのではと考え、研究を行っています。
研究業績・略歴
アルバム
左:居室の様子
右:実験室における 実験操作の様子
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