グリーティング
窒素(元素記号はN)は、タンパク質や核酸などの生体成分に含まれ、すべての生き物に無くてはならない元素です。植物は、土の中にある硝酸やアンモニウムなどの無機窒素を根から取り入れ、タンパク質や核酸の素になる有機窒素(アミノ酸)につくり変える優れた能力を持ちます。私たちは、その細かな仕組みについて未知な部分を解き明かす基礎研究に取り組んでいます。窒素が効率よく同化されると、作物はよく生育し、収量も増加します。私たちの研究がいつか食料生産に役立つことを期待しています。普段は、研究室で遺伝子やタンパク質を扱います (私ではなく学生さんたちですが) が、時々畑に出てより良い窒素肥料の与え方も調べます。
研究分野・テーマ
主な研究テーマ3つを紹介します。
1.植物の根が無機窒素を取り込む仕組みの解明
無機窒素(硝酸:NO
3-)を同化するためには、まず根の細胞内に硝酸が取り込まれる必要があります。NO
3-は、細胞膜上の2つの輸送タンパク質(NRT2とNAR2)の働きによって細胞内部に取り込まれるらしいことが最近わかってきました(右図)。2つのタンパク質が実際に細胞膜上で隣り合っているのか、NAR2の本当の役割は何かなどを明らかにしようとしています。また、もう一つの無機窒素であるアンモニウム(NH
4+)の輸送タンパク質(AMT)も見つかったので性質を調べています。
2.葉の硝酸濃度が異常なシロイヌナズナ変異体の解析
私たちは、シロイヌナズナの突然変異体の中に、野生株に比べて葉にNO
3-を高濃度に貯める変異体(H487)、逆に低濃度に貯める変異体(L522)を見つけました(下図:見た目は変わらないですが)。これらの変異体は、NO
3-の取り込みや同化に関する遺伝子に異常をきたしている可能性が高く、現在その遺伝子が何か突き止めようとしています。
3.窒素肥料の与え方の違いがオオムギの生育におよぼす影響
オオムギは秋に種をまき、翌年の初夏に刈り取ります。下の写真は、秋に異なる種類の窒素肥料をオオムギに与え、越冬後(3月)に生育の様子を見たものです。左端は、普通に使われる硫酸アンモニウムを与えたもので、その隣から順に、被覆尿素、1/2の石灰窒素、石灰窒素、尿素を、土の表面から20cm深くに与えた場合です。生育の違いが明らかですが、これは与えた窒素肥料の利用効率に差があることによるものです。肥料を与える回数や量を減らすことにつながりそうです。
研究業績・略歴
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