グリーティング
古来より「土は万物を育て守る」とされています。しかしそれは、土壌の持つ植物(作物)生産、物質循環および環境保全の機能が健全に保たれてこその話。今、日本を含め世界中の土壌が重金属や難分解性有機化合物、放射性物質等による土壌汚染、砂漠化や塩類化などの脅威にさらされています。
こうした背景のもと、私たちの研究室では、農耕地を中心に土壌微生物の生態を探りその保全に役立てる研究、微生物機能を用いた劣化土壌修復法の開発、さまざまな汚染物質(放射性セシウムを含む)の土壌中での挙動と作物に及ぼす影響についての研究等を精力的に実施しています。(野中昌法教授との共同研究です)
研究分野・テーマ
1. 農耕地における土壌微生物の生態と利用に関する研究
土壌1 gあたり約800万種、数億~数百億個の細菌が存在し、その多く(一説では99%)が現在の技術では培養することが困難であると言われています。しかし最近、土壌から核酸(DNAやRNA)を直接抽出して調べる分子生態学的な手法が確立され、培養をしなくとも土壌中の細菌群集構造や多様性を解析することが可能となってきました。私たちはこうした分子生態学的手法を用いて、農耕地土壌を対象にさまざまな環境因子が微生物群集にどのような影響を与えるのかについて調べています。また化学農薬に頼らずに、拮抗微生物を用いた植物病害の生物的防除についても検討しています。
2. 微生物機能を利用した汚染土壌の修復(バイオレメディエーション)に関する研究
難分解性有機化合物等で汚染された土壌を対象に、微生物を用いた環境修復方法を検討しています。これまでに、内分泌かく乱作用が強く疑われているs-triazine系農薬や、残留性農薬としてPOPsに指定されているhexachlorobenzene等を対象に、新規な分解微生物を単離してその分解機構を明らかにすると共に、木質炭化素材を担体(住み処)に利用したバイオレメディエーションへの応用の可能性を検討してきました。現在はフェニルヒ素化合物の嫌気土壌中での微生物変換を中心に調べています。
3. 農耕地での放射性セシウムの動態に関する研究
2011年に発生した福島第一原発事故によって東日本の広域が放射性物質によって汚染されました。それ以後、私たちの研究室では福島県内を中心に農耕地土壌での放射性セシウムによる汚染程度や動態を調べ、また作物(水稲、ダイズ、桑等)への吸収とその抑制法について検討を続けています。いずれも地元農家との「協働」で実施しており、営農に生かしていただけるように研究成果をなるべく分かりやすい形で地元に還元することを心掛けています。
研究業績・略歴
アルバム
リンク